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 8番分岐器
 #8 Turnout switch
レイアウトは漸く周回可能となりましたが、これから分岐器を20台あまり、
自作しなければなりません。数の多さに頭を抱えてしまいますが・・・

千里の道も一歩から・・・で、一つ一つこなしていく他はありません。

見えない位置に在る分岐器は、予め購入していた市販品を充当する事で済ませました。
しかし、OJゲージの分岐器は相変わらず入手困難なようで、しかも大変高価です。

OJゲージは軌間と縮尺が等しいファイン・スケールなので、どうせ自作するなら、
これまで、あまり製作例が無い、スケールに近い分岐器にチャレンジしたいところです。
そこで、「大正十四年・転轍轍叉明細図(鉄道時報局)」を元に作図・試作を行いました・・・
2021/7/24 作図 
現代の轍叉部の多くは、高マンガン鋼の一体鋳造ですが、
この当時は、轍叉部に床板を有していて、レールを削ってリベットで組み立てていました。

27型護輪器(ガードレール)は後の時代のものとは大分異なり、
滑らかな形状ですが、この頃の方が優美な感じがします。

現在でも実物は、地方私鉄や因美線で見ることができます。

工作は一時期、#100番、#135番のガラレールすら入手困難だったため、
pecoのHOフレキレール(#100番)から枕木を外して材料としました。
pecoのガラレールを輸入する事も検討しましたが、
送料がかさみ、結局フレキレールを購入した方が廉価なようです。

#100番レールだと、Oスケールで、ほぼ37kgレールに相当します。
また、他社レールより堅いため、真っすぐ敷き易すく、耐摩耗性も高いです。
ただ、若干黄色味がかっているのが、難点です。
電気伝導性もそれほど良くはありませんが、これは別途、給電線を設ける事で対処できます。

トングレールやノーズレールの切削はフライス盤で行います。
しかし、エンドミル正面削りの場合、切削面が十分滑らかに仕上がらないため、
結果、これが脱線の原因となってしまいます。

フライス加工は、滑らかに仕上がるエンドミル側面削りで行いたく、
そのためにはレールを垂直に保持する治具が必要となります。

それで、断面12×50mm 長さ100mmのS45Cフラットバー2本を使って、
図のようなレール把握治具を製作しました。
C面取りの角部で、レール底辺を下方へ押さえつける仕掛けです。

フラットバーの両辺にそれぞれ加工したので、
pecoの#100番レールと、旧篠原の#135番レール(OJフレキレールに使用のもの)が把握可能です。

レール把握治具の上下を勘合させるための、φ8ピン穴を、
φ8エンドミルの正面削りで開けたところ。

レール把握治具、レール頭部の逃げは、岡崎精工のメタルソーで削り、
C面取り部は、専用のC面取り器で行いました。

使い方は写真の通りです。
ノーズレールの切削を行っているところ。
ベークライトで作った角度定規でセッティングを容易にしました。
角度定規は8番両亘り分岐の場合、1/8、1/16、約1/68があると便利。

トングレールの切削を行っているところ。

切削を終えたノーズレール。
実物通り、対称ではなく、互い違いに組み合わせるようにしました。
気付く方は居ないかも知れませんが・・・

注:実物には、対称に切削したレールを組み合わせた例もあります。

轍叉部(クロッシング部)の床板は、t0.2燐青銅板に外形を印刷したシールを貼りつけ、
サーキュラソーで切り出します。

ウイングレールとノーズレールの量産風景・・・
繰り返し衝撃が加わる部分のため、
ハンダをよく流しておきます。

轍叉部(クロッシング部)。
市販品はノーズレールとウイングレールとの間(軌間線欠線・フランジウェイ)を樹脂で埋め、
この間の走行は、車輪のフランジで支える玩具的構造です。
作例のフランジウェイは市販品に合わせて2mmとしましたが、
実物通りの構造としたため、少々広すぎるようで、欠線部での車輪の落ち込みが大きく、
1.5mmぐらいに狭められないか検討中です。
この程度の間隔であれば、
車輪踏面の乗り移りを考慮した設計とすることで、
欠線部での落ち込みを皆無にすることができます。

また、下表によれば、カツミ旧を除いて、
24-1.5-1.5 = 21 < バックゲージ
となりますので、カツミ旧を除き、支障なく通過できると思われますが、
D51蒸機のようにホイールベースが長い車両については、検討中です。

これは、一部の動輪が曲線の内側にズレ込むため、
場合によっては、フランジウェイで支障する場合があり、
一軸の場合のような単純な計算では済まされないからです。

また、もちろん、各軸に与えられた横動量も関係します。
そのような訳で、実機での、十分な検証が必要です。
(当鉄道には、まだD51は在籍しておりません・・・)

参考資料:OJゲージ車輪寸法実測値 [mm]
  バックゲージ タイヤ幅 フランジ幅 フランジ高さ
スケール 22.0 2.8 0.6 0.6
稲見φ19 21.5 3.5 0.9 0.9
F&Tφ19 21.6 3.4 0.9 0.9
ムサシノφ19 21.4 3.3 0.9 0.9
クマタφ19 21.4 3.6 0.9 0.9
カツミφ19 21.3 3.6 1.2 0.9
カツミ旧φ19 20.5 4.5 1.5 1.2
NMRA規格#115 - 2.9 0.6 0.6
NMRA規格#145 - 3.7 1.1 1.0
NMRA規格#172 - 4.4 1.6 1.5
かつて TransPacific Railroad さんに在った表に、
稲見、F&T、ムサシノを追記させて頂きました。

トングレール部分。連結板もほぼスケールです。M1ネジで転轍桿にネジ止めしています。

転轍桿は当鉄道の通電方式では絶縁の必要があるため、
ダイヤモンド・ホィールを付けたサーキュラソーで、
ガラスエポキシ基板の基材を t1.6×3mm に切り出して使用しました。
さらに、実物の転轍桿には4本の目立つボルトナットが在るのですが、
将来、それらも表現したいと思っています。

分岐枕木は幅5mmです。ほとんど気が付く事は無いと思いますが、
並枕木、幅4.5mm(写真の左4本)との違いも表現しました。

スラックも実物と同じ位置に、実物とほぼ同じ量与えました。
先の図面に示したように、分岐側内側線路、トングレール先端で既に0.5mm設けてあり、
ガードレール(27型護輪器)に少し入った時点で、0mmとなります。

設置状況・・・
ポイントマシンは、サーボモーターを使用し、
数秒掛けて、ゆっくり転換させています。

こちらは試作途中の8番両亘り分岐・・・
当時、図面が入手できなかったため、上毛電鉄・大胡駅 や 中央本線・竜王駅 にある実物を参考にしました。

追記→国会図書館デジタル 鉄道法規類抄 第18編 工事図面(上)コマ番号266以降 に関係図面があります。 

トングレールがスライドする床板の手前側、目立つ2枚組だけを洋白薄板で表現しました。
(実物のトングレール床板は7枚組で、トングレール全長に渡って支えている)

この分岐器は、フランジウェイは未だ2mmです。
脱線には至りませんが、欠線部での車輪の落ち込みが大きいのが気になっています・・・

2023/03/24
機関区に設置する分岐器・・・
分岐器も多数製作したので、大分手慣れてきました・・・

しかし、近くで見ると数々の横着な所業が・・・

転轍桿・連結板、取付けの詳細を説明します。
ハンダ面積が少ない上、ここが外れると大事故につながりますので・・・
市販分岐器でも、たまに此処のハンダ付けが外れる事があります。

転轍桿に真鍮線を通し、U字型に曲げ、さらにトングレールに開けた穴に通します。
枕木上には、これから取り付ける連結板とM1ビス。
転轍桿は、ガラスエポキシ基板 t1.6 から製作し、黒く塗装しています。
もちろん絶縁のため銅箔は除去しています。

この写真では、未だ角ばっているトングレール趾端(したん)にも注目・・・

トングレールと連結板をハンダ付け。
真鍮線を少し残して切断し、締結ボルトの表現をします・・・

トングレール趾端は、薄く仕上げるのはもちろんですが、
実物のように少し角を丸く落としておくと、(←矢印)
ここにフランジの挽き目などが引っ掛かかって、
車輪がレール上に乗り上げることを防ぎ、脱線防止になります。

分岐器では微妙なひと手間が、走行性能に大きく影響します。


この頁のURL   http://musikfest.ran-maru.net/OJQ029.html

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