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 フライス盤の魔改造 駆動系 Remodeling the milling machine to belt drive.
 当局は、建設・開業が遅かったため、その遅れを取り戻すには機械力に頼らざるをえません。
 そこで、鉄道模型界で、比較的評判の良いフライス盤 FM80E(A) を選定・運用してきましたが、
 ギヤ駆動のため、最高速で回すと、すさまじい音がします。

なので夜間は、とても作業できるものではありません。
低速時も、ひどく賑やかで、ワークへのかすかな刃当たり音で加工原点を割り出す事も難しい。

そのためか、海外にはベルト駆動に改造する、怪しげなキットも存在したようですが、
ここでは、こまごま設計計算を行いながら、魔改造を図ることに・・・
個々にパーツを購入すれば、かなり割安で済みますし・・・

ところで、最近は会社でも、計算ができず、勘で設計する人が増殖中で困ります。
有名大学の大学院出の人でも、簡単な積分ができなかったりします。
昔は、数学や計算をおろそかにした設計をすると、上長からこっぴどく怒られたものでした。
ましてや、数学的センスに溢れた技術者にお目にかかる事も無くなり、
日本の将来が案じられる事態です・・・
最近、大企業でも多く見られるプロジェクトの失敗、崩壊・・・その根底には、
数学力の不足が潜んでいる場合が多いように思われます。

数学のできない技術者というものは、工芸家か芸術家かもしれないが、真の技術者ではない。
H.C.T.ダウディング

ベースプレートの部分組立図です。
機体差もありうるので、あくまで参考程度に見て下さい。
オリジナル機は、モーターと主軸の減速比が、Lo:1/4と Hi:1/2の2速で、
作例でも当初、交換できるように、両方のプーリーを考えていましたが、
OJゲージの工作には1/2の減速比だけで十分のようです。
また、別項の自作制御回路を使用した場合、低速回転時に、比較的トルクの粘りがあるので、
なおのこと、2速にする必要性は感じられませんでした。

購入品は以下の通りで、廉価で済みました。

大プーリー(K30XL037BF・片山チエン・30歯)¥979-
小プーリー (K15XL037CF・片山チエン・15歯)¥629-
タイミングベルト(100XL031U・三ツ星ベルト・幅7.9mm・周長254mm)¥589-
タイミングベルト(100XL037U・三ツ星ベルト・幅9.5mm・周長254mm)¥679-

エンドミル食い込み時の発生トルクなどを計算して、
タイミングベルトは幅の異なる2種類を準備しました。

ちなみに怪しげな海外キットは、
写真で見た限りですが、タイミングベルト幅が細すぎるように思われました。

上記のタイミングベルトを使用したとき、プーリーの軸間距離は、68.8mmとなります。
またさらに、後述の軸間調整機構を設け、微調整に対処します。

追記:上記のベルト・プーリーの組み合わせは、後日、別項の フライス盤プーリーの交換 のように
インボリュート歯型のものに変更しました。

2019/11/16
ベースプレートは手持ちの材料に、たまたま t8 A5054 快削アルミが在ったので・・・
バンドソーで切り出しているところ・・・

2019/11/16
バンドソーで切り出した端面は、改造前のフライス盤で仕上げます・・・
フライスの制御回路は調子が悪かったので、既に自作品に交換しています。

2019/11/16
ロータリーテーブルにセットし、これから角を丸めるところ・・・

φ50 の穴を開ける。
先に開けた取付け穴を利用し、ロータリーテーブル上に固定して、
ゆっくり回転させながら、溝を掘っていきます・・・

ギヤを抜き取る・・・
写真のように、ギヤ・プーラーを使いましたが、
固く嵌っているわけではなかったので、
無くても何とかなったようです。
これで、しばらくフライス盤は使えなくなります・・・

工作機械で、それ自身を作る事になるため、手順をよく考えないと、
加工手段を失ってしまうのは、注意すべきところでもあり、面白さをも感じるところ・・・

この後、変形六角形のギヤボックスを外します。

2019/11/23
加工したベースプレートを取り付けます・・・
黒い押さえ板は元の部材の流用。

2019/11/23
大プーリーに開いている穴径の拡大・・・
旋盤の中ぐりバイトで、φ20+0.02ぐらいに仕上げました。

中ぐり作業は、バイトのオーバーハング量が大きく、精度が低下しがちなため、
横送り台の首振り運動や蛇行動は、できるだけ避けなければなりません。

この後、プーリーにM4セットビスを取り付ける加工を行います。

小プーリー穴径の拡大。
やはり旋盤で φ8+0.02ぐらいに仕上げました。
φ4.5 に入る、小径用中ぐりバイトを用いています。

この作業をボール盤とドリルで行うと、穴径が正確に出ませんし、
加工面も綺麗に仕上がりません。
さらには穴の垂直度も不正確になる事があります・・・
プーリー穴の精度が悪かったり大きすぎると、
回転中にプーリーががたついたりして騒音の原因になります。

こちらも、プーリーにM4セットビスを取り付ける加工を行います。

M4セットビス先端はモーター軸のキー溝に嵌り込む様、旋盤で細く削りました。
M4セットビスは、もう一本90°の位置に追加します。
さらに調整完了後、緩み防止のため、プーリー・モーター軸、
ロックタイト高強度で固定してしまいます。
セットビス2本はロックタイト中強度で固定します。

運転中、これらが緩むとかなりやっかいな事態になりますので・・・
写真では、荒れたモーター軸に、その苦労の痕跡が表れています。

2019/11/23
モーターを取り付けるスペーサー3個。H=36 φ20 のアルミ(A5052)円柱です。
これも旋盤で丸棒から挽きました。
スペーサー下側は右端のように、センターにタップを立てますが、(上下逆さまに置いてあります)
上側モーター側は、センターから5mm偏芯させた位置に M5 タップを立てます・・・

写真は、大プーリーには未だフランジを取り付けていない状態です。
フランジはプーリーの説明書に従い、しっかりカシメます。
ロックタイトも併用すると良いです。

2019/11/23
プーリーを取り付け、タイミングベルトを掛けます。
先ず、主軸から遠い方のスペーサー上下の、取付けボルトをゆるく締めます。

次いで、ベルトのテンションが適切になるよう、パイプレンチでスペーサを廻します。
スペーサのタップ位置が偏芯しているので、
モーターが少し移動してベルトにテンションがかかります。
その状態でボルトを締めて固定。
残りのスペーサーも廻して穴位置を合致させ、ボルトを締めて終了。

ベルトの適正なテンションはベルト幅に依存し、
ベルト幅7.9mmの方は軸荷重で、25.1~37N (2.6~3.7kgf)
幅9.5mmの方は 33.6~46.4N(3.4~4.7kgf)ですが、実際には大体で構わない様です。
張りが弱すぎると過負荷時にベルトがプーリーに乗り上げます。
強すぎるとベルトの寿命が短くなり、消費電流も増えます。プーリーも過熱気味となります。
暫く使用した結果では、ベルトテンションは、かなり弱めが具合が良いようです。

ベルトのテンションの測定は、ベルトに程々の押圧を掛け、
その時のたわみ量から計算することができます。

タイミングベルト幅は、制御回路に、過負荷・過電流シャットダウン機構が在る場合は、
大して過負荷が掛からないので、幅7.9mmで十分です。
そうでない場合は、幅9.5mmを使用します。
幅9.5mmの場合は、騒音が若干大きいのと、アイドリング時の消費電流が若干増えます。

オリジナル機のプルロッドのエンドキャップ(赤矢印)を、そのまま利用したく、
さらにプーリーガードを兼用させる目的もあって、
元の天板の一部を加工して、取り付けました。
エンドキャップを使用しない時に、一時、立て掛けておくスタッド(橙矢印)も付けました。

Z軸方向のDROのため、ベースプレートに厚板の金物(緑矢印)を取り付けています。
1/100mm を安定に計測したいので、取り付けベースの十分な剛性が必要だからです。

ベースプレートにはモーターへの中継端子も取り付けました。
安全のため、モーターからのFG線(緑色)は、一旦ベースプレートに落とし、
それから制御ボックス側へ配線する必要があります。

すぐ真下は金属の切子が飛び散る環境のため、
圧着端子の金属部は、絶縁のためのカプトンテープ(茶色)で覆って万全を期しました。

2020/01/20
モーターから100Hzの唸り音が若干しますが、相手が真鍮なら、
低速でエンドミルが、シャカシャカ削る工作が楽しめます。
元が、ジャー・・・ギャーという、騒々しい機械だったとは想像できません。

同型のマシンバイス2台の内、微妙に背の高い方を、低い方に揃える為に削ったところ・・・
ヒュイーンといった感じで大してうるさくもないので、
相手が鋼の時でも、周りに気兼ねなく最高速で回せます・・・

自作した制御回路に加えて、
デジタルノギスを使ったDROも3軸に装備しました。
魔改造の終わった旋盤と併せて記念撮影・・・

制御系と駆動系は???・・・なフライス盤ですが、
モーターの回転そのものは静かで強力、滑らかで、
フライス主軸ベアリングも良いものが入っていました。
XYステージの出来は、さすがに評判の良い機械のことはあります。
しかし、これらは、国内で検品・再調整された機械だからかもしれません。

お願い:同様な改造を行う場合は、必ず、ご自身で、ご自身の責任において行ってください。
メーカー等に、本項と同様な改造を強要するような事は、絶対に止めてください。
そもそもメーカーは、保証などの観点から、そのような依頼を受けることができませんし、
メーカーに多大な迷惑を掛けることになります。


2024/02/16
フライス盤のモーターですが、
長期間の酷使により、巻線が断線しかかっているようで、
時々、ゴリゴリと異音・騒音がするようになり、交換を考えていました。

左は不調のモーターを分解したもので、定格300W 4000rpm。
右は、550W 6000rpm 旋盤用と称する交換用モーター。中華製・・・

交換にあたっては、元のモーターのベースプレート(右矢印→)を再利用しました。
これに、追加工して、交換用モーターに移植・・・


・・・移植したベースプレート。
通風口、モーター取付穴などを開けました。
モーターシャフト径も大きくなったので、
それに伴いプーリー穴径も Φ8 から Φ10 に拡大。

通風口はもう少し大きくしたかったのですが、
ベースプレートの強度が損なわれそうなので、この程度で止めときました。
放熱不足になるようであれば、別途考えます・・・


・・・交換後、定位置に取り付けた様子。
アース線が電源線と別途なので、少々鬱陶しいです。


他、全景・・・
結果は、出力が大きくなったため、起動電流が大きいようで、
リミッター設定電流 1.5A 以上に設定しないと、
(自作)制御回路のリミッターが作動してしまいます。

そのほか、制御回路と少々マッチングが良くないのか、
原点出しなど超低速回転時に、ビーッビーッとハンチングを起こすことがあり、
少々安定しませんでしたが、駆動ベルトのテンションを高めにし、
回転に少し負荷が掛かるようにしたところ、解消しました。


あと、高速回転時にキュルキュルと煩さかったので、
カーボンブラシを一旦取り外し、取付方向を反転させたところ、これも直りました。
今では、ヒュイィーンといった感じで快適に作業してます。

この頁のURL   http://musikfest.ran-maru.net/OJQ022.html

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