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 CVCC電源による制御 Control of model railway by CVCC power supply.

 Production of Constant Voltage Constant Current power supply (CVCC) for model railway.
 We will consider applying the CVCC power supply to reproduce the wheel slipping of the steam locomotive.


 CVCCといっても、かつての低公害ガソリンエンジンのことではないよ・・・
 定電圧制御(Constant Voltage) と定電流制御(Constant Current)を切り替えられる電源の事をいいます。
 ここでは、蒸機の空転の再現のため、CVCC電源を応用する事を、検討しました。

 今回は、電気回路の専門知識が無いと理解が困難です。その際は電圧制御と電流制御で、モーターの挙動に
 違いがある事だけを認識して頂き、後は読み飛ばして頂いて結構です。
 また、以下は、判り易さのために、電子工学的には、多少不正確な表現が含まれます。
2022/7/27
鉄道模型用に限らず一般的に電源は、原理的に、
定電圧電源と定電流電源の二通り、あるいはその中間状態に大別することができます。
そのうち、純粋な定電流電源・制御は、現在、鉄道模型用としては
ほとんど用いられることはありません。

なお、PWMやDCCのような、デジタル方式においても、
(実際、製品として明確に区別されているかは別として・・・)同様に分類可能です。
(例えば、定電圧制御に近いPWM、定電流制御に近いPWMが存在する。)

鉄道模型に用いられる一般的なDCモーター(永久磁石界磁型DCモーター)を、
理想的な定電圧/定電流電源で駆動した場合、次のような特性となります。
定電圧電源・制御 (CV) 定電流電源・制御 (CC)
電源の出力インピーダンス 0Ω 無限大:∞Ω
制御特性 定速制御に近い。 定トルク制御に近い。
負荷が増えた時の挙動   電圧から決まる、ある一定の回転数を保とうとし、トルクが増加する。 トルクは一定で、回転数が低下する。
定電圧制御なので、
モーター端子間電圧は変わらない。
回転数の低下に伴い、(モーターの逆起電力が低下するため)モーターの端子間電圧が減少する。
モーター消費電流が増える。 定電流制御なので、モーター消費電流は変わらない。
モーター消費電力も増える。 モーター消費電力は減少する。
鉄道模型の制御に使った時。 低速運転が容易。
上り勾配、下り勾配など負荷の変動があっても割合、速度は一定。(その度合は、電線等の抵抗分、モーターの特性等による)
ラピッドスタートになる。低速で一定速度の運転は難しい。
上り勾配など負荷が増えると極端に速度が落ちる。下り勾配では極端に加速する。
電気機関車の様に各駆動軸に個別にモーターを有する時(モーターは並列接続) 一軸で空転が始まっても、その軸の空転が増々激しくなるといったことはない。全駆動軸の回転数が同一になる傾向。再粘着特性良好。 一旦、一軸で空転が始まると、その軸の空転が、増々激しくなる傾向。再粘着特性が非常に悪い。
※1:素の特性は上表の通りとなりますが、これにサーボなどフィードバックが加わるとまた違った挙動を示します。
※2:昔、多かったレオスタット制御は、定電圧制御よりは定電流制御に近いが、純粋な定電流制御からは程遠い。

上記のような特性があるため、アナログ的に鉄道模型を制御する場合には、
通常、定電圧電源・制御が好ましく、それが用いられます。
しかし、定電圧制御は、回転数一定の特性があるため、特に、蒸機の空転の再現には適していません。

そこで、スタートを定電圧制御(CV)によって滑らかにスタートさせ、
途中で定電流制御(CC)に切り替え、蒸機の空転を表現し・・・
再び(CV)で加速・・・滑らかに減速というような制御ができると、実感的で面白いと思います。
Youtubeにも、たまたま、それに近い条件が成立し、空転が表現されたと思われる映像があります。
また、モーターやギヤ比を替えるのではなく、制御特性そのものを変化させるのは、
モーターが本来持っている特性に根差した方法で、より簡便で本質的でもあります。

回路試験・実験用のCVCC電源が、多数市販されていますが、それは、
定電圧モード、定電流モードがいきなり切り替わり、その途中状態がありません。
鉄道模型用として利用するには、その途中の状態、
すなわち出力インピーダンスが0から∞(無限大)まで、
滑らかに変化させた方が良いと思われます。(←要検証)
ここでは、そのような特性を持つ電源を試作・試験してみる事にしました。

回路は、定電流制御回路を基本に、定電圧制御回路を付加し、
定電圧~定電流の間を滑らかに変化させることのできる回路を設計しました。
なお、回路には高周波点灯のためのチョークコイル(L1)を含んでいます。
また、詳細な回路動作解析は、回路シミュレーター Micro-Cap12 というものを使って行いました。

接続図です。動作の概略を説明します。

CN1にACアダプタなどの電源を接続供給します。
電圧はDC15~20V くらい。3Aまで扱えます。

IC1-1/2(pin2,3,1の側)が、出力電圧の検出を行っています。
VR3 pin2 から出力電流の検出を行っています。
VR2 で電流制御と電圧制御の比率を決定します。
VR2 pin2 がpin1側にあるとき、CVモードとなり、
逆にVR2 pin2 がpin3側にあるとき、CCモードとなります。
IC1-2/2(pin6,5,7の側)が、電流制御素子 Q1 MOS-FETのドライブを行います。
VR1で出力(電圧・電流)の設定を行います。

C3 は位相補償用コンデンサで発振を抑制します。
D1はツェナーダイオードによるレベルシフトで、
大電流時にQ1ゲート電圧が不足することが無いようにする等の目的です。

OPアンプの IC1 AD8606(ADI) は、アナログデバイセズの製品で、
単電源動作可能な、C-MOS入力 高精度OPアンプです。
試しに一般精度のOPアンプを使用すると、オフセット電圧が原因し、例えばスロットルを回すと、
出力が、0Vからいきなり2Vまで立ち上がり、途中が無い様な事になります。

また、ここにあまり広帯域、高スルーレートのOPアンプを使用すると、
却って発振の原因となりますので、ご注意。

2022/7/27
内部配線の様子。乱雑でお見せできるような代物ではありませんが、
発振もせず動作します。
ケースは他のものを流用したので、余計な穴が開いています。

頭が黄色いつまみがCV、CCモードの切り替えです。
頭が赤いつまみはRateで、電圧と電流の比を決定します。
例えばCVモード出力4Vで、
CCモードに切り替えたとき、何アンペア出力するかを設定します。
左の逆転器のようなものは、スロットルです。

運転状況はCVモード(定電圧モード)では、一般のパワーパックと同様です。
CCモード(定電流モード)では、先の表に示した特性を示しますが、
曲線の走行抵抗や勾配による速度変化が激しく、
VR1の10回転でフルスロットルになるヘリポッドでは運転が結構難しい・・・
ので、後日、改造を考えています。
CVモードとCCモード間の移行は、Rateが適切に設定されていればスムーズです。

この時期、レイアウトルームは灼熱地獄なので、
空転模擬は、これから涼しくなって環境が整備できたら、また報告します。

あと、市販のCVCC電源の様に、CVモードとCCモードが、いきなり切り替わる電源による、
運転も実験してみたいと考えています。


この頁のURL   http://musikfest.ran-maru.net/OJQ038.html

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