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 フライス盤の魔改造 制御回路 Self-made control circuit of milling machine
老後は、毎日、旋盤やフライス盤を回して暮らそうと企んでいるのに、
暑い日や、長時間運転で、フライス盤が度々不調を来します・・・

購入してから、それほど経過していないフライス盤 FM80E(A) ですが、
暑い日や長時間運転を行うと、突如として動かなくなってしまいます。
制御素子の過熱・放熱不足が原因と思われますが、
修理を依頼するのも面倒だし、
基本設計に問題があるのなら、また直ぐ同じ故障を繰り返すでしょう。

これでは、非常にイライラがつのるので、
制御回路を一から作り直すことにしました。
自作回路ならば、何かトラブルがあっても直ぐ対処もできるしね・・・

追記:2023/10 現在、FM80E(A) は改善のため、電装品を国産品に換装しているようです。

2019/10/14
モーターと天板を取り外したところ・・・
回路の大半はこの部分に纏められています。
ギアカバーの天板にモーターや歯車の軸受けが付いているという、
国産製品の設計者が見たら卒倒しそうな構造・・・
ギア駆動なので騒音がひどく、エンドミルの刃当り音を聞き分けられない・・・
なので、加工原点を出すのに苦労したりします・・・

制御回基板も似たようなもんです・・・両面実装基板で、裏面にはチップ部品がギッシリ・・・
左の放熱器が付いている素子2つが、モーターの電流制御を行うSCRですが、
制御電力に比べて、放熱器があまりにも小さすぎるように思われます。
回路の詳細解析はしていませんが、
随分複雑な割には大した機能もなく、要領の悪い設計であることは見てとれます。
資源を無駄使いしているような設計です・・・

自作する制御回路の概略ブロック図です。
回路は当初、PICマイコンとMOS-FETによるPWM制御を考えていましたが、
電圧の異なる定電圧電源がいくつか必要なので、面倒だなあと思っていたところ、
秋月電子から「20A AC100Vトライアック万能調光器キット」として売られている、
導通角制御(位相制御)基板が在ったので、試してみました。
基板と接続するVRはスイッチ付きの100kΩ、 CTは0.22μF耐圧400Vのフィルムコンデンサを使用しました。
詳しくは秋月電子の取説を参照してください。

試験結果は、低速運転時にモーターから100Hz(当方はAC50Hz地域なので)の唸り音が若干大きいものの、
低速時の粘りがあり、制御性良好、十分実用になることが判ったため、メインの制御はこの方式で試作することに・・・
唸り音が気になる場合は、キャリアを可聴帯域外にした(例えば20kHz)PWM制御にする必要があるでしょう。

低速運転時にトルクに粘りが感じられる理由は、電源にAC100Vを直接使用するため、
制御回路の出力インピーダンスが低く、結果、
モーターの定速回転性が強まるためと思われます。

モーター電流の検出を行い、
エンドミルが材料に噛み込んだ際などの、過負荷・過電流時に、
モーター電流のシャットダウンを行うために、
やはり秋月電子の「SSR半導体リレーキット」を設けました。
電流検出にはACS712ELCTR-30A-T(Allegro Micro System)という電流センサICを使用。
また、オリジナルには無かった、非常停止ボタンも設けます。
電流センサIC出力のA/D変換や、その他全体の制御は、PICマイコンで行いました。

なお、同様な回路を自作される際、この過電流時の遮断機能を省略すると、
エンドミルが材料に嚙み込んだ際、即座に回転が止まりませんので非常に危険です。
ですので高速遮断回路は省略しないでください。

そのほか、AC電源を絶縁せず、そのままモーターに供給する方式のため、
感電・発火防止など、安全には十分注意してください。

追記:当初、高速遮断回路無しの回路例も記載していましたが、
安全上、好ましくないと判断し、削除しました。

2019/10/14
内部の様子。オリジナルの電子回路は、フライス盤のコラムに搭載されていましたが、
作例では、外部の独立したケースにまとめました。
金属の切り子が飛び交う環境で使用されるので、通気口などを開けてはいけません。
説明のためACアダプタは外へ出してあります。

背面に放熱器を背負った2つの素子はトライアックですが、
フランジが絶縁されているので、工作が楽です。

整流ダイオードも発熱しますので底面に取り付け、放熱しました。

PICマイコン基板は、以前製作したものの流用です。
ファームウェアももちろん自作です。

2019/10/14
無負荷時の電流センサの出力波形。
当方は AC50Hz 地域なので、100Hz の脈流が表れています。

無負荷状態でスロットルを回していくと、
モーターに加わる電圧波形は大きく変化していきますが、
面白い事に、電流波形の方は殆ど一定で変化しません・・・
過電流検出は、この電流を検出し作動させることになります。

追記:試用を重ねた結果、ピーク電流に対する過電流検出では、多少過敏で不安定に思われたので、
10ms 間(脈流の1サイクル分)に電流検出を256回行い、
(すなわち約 39μs 毎のサンプリング間隔)
その平均電流値に対して過電流検出を判断する様、
ファームウェアを改変しました。
電流センサも当初 ACS711ELCTR-12AB-T を使用していましたが
ACS712ELCTR-30A-T(Allegro Micro System)に変更しました。

安全のため、運転中は過電流検出値をなるべく小さくし、
重切削など、止むを得ない場合のみ設定値を上げています。
下表は、次項のモーターを550Wのものに交換後の設定値です。

DIPSW 設定 過電流検出値 (10ms 平均)
0 1.5 [A]
1 1.8
2 2.1
3 2.4
4 2.7
5 3.3
6 3.9
7 4.5
8 5.1
9 5.7

2019/10/14
出来上がった、制御回路ボックス前面・・・

左上は赤色LEDで、運転中は常時点灯、
過電流検出による非常停止時は高速点滅、
非常停止ボタンが押されての非常停止時はゆっくり点滅、
と表示の区別をしました。

蒸機の逆転器ハンドルのようなスロットルレバーは自作。
赤いキノコスイッチは非常停止ボタン。黄色のテプラで Emergency Stop の表示をしてあります。
(要はここだけ国際安全規格に沿った形とした訳です)
正逆転スイッチは、元のフライス盤からの流用ですが、
接続関係が直ぐには判らず、解析するのに少々時間を要しました。

電流計(SD-39-DC3A 若松通商扱い)はネットで丸窓のものを探し出し、レトロな雰囲気に・・・
ちなみに、無負荷運転時は、回転数に依らず0.5Aぐらいを指します・・・

2019/10/14
制御回路ボックス背面・・・

右端はAC電源インレットで、一応ノイズフィルタ付きを使用しましたが、
当然の事ながらノイズ測定環境が無いため、(外部施設での測定も多大なコストが掛かる)
VCCIなどの電磁放射・伝導ノイズに関する規格をクリアしているかどうかは判りません。

放熱器は長時間運転しても、わずかに暖かくなるくらいで、十分な放熱能力でした。

左上はモーターへ至る配線のコネクタ。
下の赤いツマミはディップロータリースイッチで、
モーターのシャットダウン電流値を設定することができます。

使用時のレイアウト。
駆動系も歯車からタイミングベルトへ改造後の姿です。
制御ボックスに、角度万力を載せているのは、
あわてて非常停止ボタンを押したときに、
軽いので吹っ飛んで行かない様にするため・・・

過電流シャットダウン回路は高速、鋭敏で、
エンドミルが被削材に食い込むなど過負荷が加わると、一瞬で停止するので、
駆動ベルトやモーターなどにも過負荷が継続する事無く、
安心感を持って工作に取り組めます。

この一連の改造で、故障や不具合に悩まされる事も無くなり、
使い勝手も良好なものとすることができました。

これで、気分の良い、老後を過ごせる事でしょう・・・


ここのURL   http://musikfest.ran-maru.net/OJQ021.html

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